ノマクニヒコのブログ

書きたいことを書きます。

ユング自伝より

ユング自伝1より引用。ページ135

どこか見知らぬ場所で、夜のことだった。私は強風に抗してゆっくりと苦しい前進を続けていた。深いもやがあたり一面にたちこめていた。私は手で今にも消えそうな小さなあかりのまわりをかこんでいた。すべては私がこの小さなあかりを保てるか否かにかかっていた。不意に私は、何かが背後からやって来るのを感じた。振り返ってみると、とてつもなく大きな黒い人影が私を追っかけてきていた。しかし同時に私はこわいにもかかわらず、あらゆる危険を冒してもこの光だけは夜じゅう、風の中で守らなければならぬことを知っていたのである。目が覚めた時、私は直ちにあの人影は、「影入道」つまり私のもって歩いていたあかりで生じた、渦まくもやに映った私自身の影だとわかった。私はまた、この小さなあかりが私の意識であり、私のもっているただ一つのあかりであることもわかった。私の自分についての理解は私のもっている唯一の宝物であり、最も偉大なものである。暗闇のもっている力に比べると、きわめて小さくかつ力弱いけれども、それはなおあかりであり、私だけのあかりである。